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慢性胃炎

この疾患の診療科

特徴

慢性胃炎とは、長期間にわたり胃炎が続いている状態です。
慢性胃炎にはヘリコバクター・ピロリ菌の感染がかかわっていると考えられます。ピロリ菌が胃の中に棲みついてしまうことで少しずつ胃粘膜を痛めつけて、何十年にもわたって徐々に炎症が広がっていくことで起こります。
胃炎には、暴飲暴食や薬剤などの影響で起こる急性胃炎もありますが、急性胃炎の場合は一度治癒すれば胃の粘膜はきれいに治ります。しかし慢性胃炎は治療をしても、正常な胃粘膜に戻ることは期待できません。
また、ピロリ菌に感染すると好中球やリンパ球といった白血球を動員して排除しようとして炎症が起こります。またピロリ菌自体が毒素を出すことで、直接胃粘膜を痛めつけることも証明されています。痛めつけられた胃粘膜は萎縮性胃炎という状態となり、きれいなピンク色だった粘膜は色あせ、粘膜の下を走る血管まで透けて見えるようになります。胃の粘膜は再生を試みますが、胃の中にはピロリ菌が存在しています。このような状態で粘膜を再生すると正常な胃の上皮ではなく大腸や小腸の粘膜に似た上皮が形成されてしまいます。この状態は、腸上皮化生と呼ばれ、腸上皮化生の粘膜からは胃がんが発生しやすくなります。そのため、慢性胃炎、とくに腸上皮化生を伴うものは前がん病変として注意が必要です。

症状

慢性胃炎の症状としては上腹部不快感、上腹部痛、食欲不振などさまざまです。
近年では症状がなくても、検診や人間ドッグなどで行うスクリーニングとしての上部消化管内視鏡で指摘されることが多くなってきています。

診断

診断には上部消化管造影検査(バリウム検査)や上部消化管内視鏡検査がおこなわれます。内視鏡検査で炎症の程度や広がり、萎縮の程度、腸上皮化生の有無を診断します。特に重要なのは胃がんの合併で、肉眼的に癌が疑われる場合は組織を採取して(生検)、病理検査にて詳しく調べます。
また、ピロリ菌の検査としては内視鏡で組織を採取し、菌が持つ酵素であるウレアーゼを調べる迅速ウレアーゼ試験や病理検査で直接ピロリ菌を確認する検査があります。内視鏡を使わない検査としては尿素呼気試験、尿検査や血液検査で測定できる尿中あるいは血中ピロリ菌抗体、便検査で測定できる便中ピロリ抗原があり、いずれも比較的簡単に調べることができます。

治療

原因であるピロリ菌の除菌が推奨されます。以前はピロリ菌の除菌は胃潰瘍などの一部の病気に限定されていましたが、現在は慢性胃炎に対しても保険適応となっています。除菌療法はプロトンポンプ阻害薬と2種類の抗生物質を組み合わせて1週間内服します。以前はこの治療法で90%以上の成功率でしたが、最近では耐性菌の出現があり除菌成功率がやや下がってきています(2015年発売された新規のプロトンポンプ阻害薬であるボノプラザンの登場で、除菌率はまた90%以上となっています)。除菌に失敗した場合は、薬の種類を変更して二次治療を試みます。
しかし、ピロリ菌の除菌により逆流性食道炎などの悪化が見られることがあるため、ほかの基礎疾患を有している方に対しては注意が必要です。

予防と改善

予防には原因であるピロリ菌の除菌が考えられます。
また、食生活を含めた生活習慣の改善も有効です。
慢性胃炎は長期にわたる胃炎です。
精神的ストレスをためない・十分に睡眠をとる・便秘を解消するなど胃に負担をかけない生活習慣が胃炎の予防につながります。

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